近況

近況
2000/2005英国サセックス大学法学部修士卒 冨田麻里(7thclouds) 愛犬びすけと東京新宿区早稲田町に暮らす 51歳 職業 英訳 現在週3日公務員非常勤職員

2011年1月6日木曜日

英国法学部大学院留学「授業はどんな感じ」か・・友好的で真剣真摯な議論



ブリティッシュカウンシルEducation UK online 大使
12月のお題3 「授業はどんな感じ?」
「留学先ではどのようなコースで学んでいますか?授業にはどんな形式があって、何人くらいの学生がいて、どのような雰囲気なのでしょう?日本と比べて大変ですか?英国の授業の様子をレポートしてください。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.どのようなコースで学んでいたか:
私はサセックス大学法学部大学院で学び
二つのコースで修士をとりました。
総合法学修士
刑事政策修士
(*ちなみに上記文中は1999年-2000年、2001-2005の時のことです。
現在コース設定は総合法LLMがLAW LLM法コースでLLM、また、私の頃はMAだった刑事政策コースもLLMコースになっています)

Aコースのプログラム(1999年当時):
まず、最初の法学修士では、総合法学というコースで学びました。
General Law of Arts (LLM)です。
この総合法コースの特徴は、
いわゆる刑法・商法という枠組みを超えたゼミが提供されているところにあります。
私がとったジェンダー同性愛者の人権のゼミ、それからたしかほかには家族法、子供の人権関連のゼミもあったと思います。
又サセックス大学法大学院の学部越えて学べる利点を活かし、私の問題意識と書きたい分野にあわせ、
ヨーロピアンインスティチュート(欧州政治学)大学院学部のゼミ(ECHR)もとりました。
(総合法コースは私以外はたしか全員イギリス人だったような。
ほかのコースに比べ英国国内法整備への問題意識が強い学生が多かったかも?)。

法学部大学院全学生必修の授業には
欧州各国の刑事手続き法を比較法的に学ぶ授業がありほかは自由にくむことができました。
本来私はイギリスにだけ特有の第三者立ち会い制度を学びに言ったのですが、
その年は2001年から後に学んだ刑事政策コースが結局立ち上がらず、
総合法コースに参加しました。
いく前からそういうこともあることはわかっていましたし、予測の範囲内でしたのと、
立ち上がらない場合でも
総合法か国際刑事学コースかどちらでもいずれも興味のある分野でと思っておりましたので,
大変勉強になりました。

さて、基本はほぼ同じなので最初の修士の時の様子でお知らせしますね。

B基本スケジュール:
秋春夏タームでそれぞれ授業の形式など異なりますが、
まず週のスケジュール的には、
10月からの最初のターム(秋ターム)には
授業では比較刑事手続法の授業が週に一コマ(1月に試験)、
そのほか専攻に関係なく法学部大学院全コース合同の修士論文の書き方の授業もありました。
それからもう一つは比較刑法Comparative Criminal Justice Systemsのゼミ
(ゼミでの発表が一回、年末にタームペーパー)
春タームは週に2つのゼミ必須
夏ターム6月からの最後のタームは論文作成だけとなります。

最初のターム、比較刑事手続き法授業と比較刑法のゼミ
比較刑事手続き法の授業は
割と朝早めで大きな講堂が入るときには
先生はじめみんな講堂の中が息が白くなるほど寒いので
コートを着たまま帽子や手袋したままエイヤァって感じで講堂に入るのですが、
終わる頃は結構授業なのに白熱してみんなの熱気で暖まっていたのを覚えています。
ノートをとるのも必死でしたが、
今でも最も尊敬する比較刑事手続人権法の先生の授業ということもあって、
授業は聞き漏らしがあってはいけないので、先生に許可をもらってMDに録音しました。
刑法だけでなく人権全般の核となるようなすばらしい骨太の授業だったと今でも思っています。

春タームは
法学部総合法のジェンダーコースから同性愛者の結婚および子供を持つ権利についてのゼミと、
ヨーロピアンインスティチュートのコースからECHRのゼミも受けることができました。

かねてから興味のあったそれなりに自分でも勉強していた分野である
同性愛者の結婚と子供を持つ権利についてのゼミでは、
結婚の権利などについて意見を聞かれると答えることができたものの、
イギリス国内法整備の観点から
より具体的な生臭い話こそが乗り越えなければならないところにきている
同性愛カップル離縁や死別の場合の財産分与の法律的問題や
代理母・代理父との関係での子供の親権の判決、
同性愛カップル共有財産権帰属の問題、ランドロー,家族法の知識も問われるところが多々あり、
予習の分量もものすごく、大変勉強になったというか、
ゼミのテーマによってはくいついていくのに必死だったというところがあります。
が、自分のかねてから勉強していた分野でおもいっきり意見を言えるテーマもあり
(結婚の権利と宗教上の教会の結婚認定証との関係)
さらにタームペーパーを書く中で調べ抜き、
自分の考えをより深めることができ
自分の考えを証明するのが楽しかったという思い出があります。

ECHRのコースでは私の関心分野、知的障害者の人権がECHRに提訴され判決を得て国家法を越えた救済命令が出されたケースについて発表しまた多くの判例について学びました。
体調を壊し足に壊疽を起こすなど思いがけない状況もありましたがなんとか一回休んだだけで
ゼミの準備をするなかで勉強や自分の考えを深め
ゼミに出席し議論に参加て本当によかったと思っています。

ゼミの空気はどれもとても友好的ですが、
一方誰もが猛烈に真剣に準備して望みますし
真摯な議論をそれぞれ展開するのがゼミです。
どの授業・ゼミもそうですね。

春コースのゼミではゼミの内容によっては時に準備不足気味なところもあったと思うのですが、
とにかくゼミのテーマについてよく調べその問題の所在と各説議論の論論理構造を理解しついていき
何とか自分の意見を論理的説得的に展開し述べることが大事だと思います。

2.授業の形式,人数など
授業形式と人数:

A授業:秋タームの法学部大学院学生全コース合同授業一コマは大きな講堂で行われ、
商学部系あわせ総勢約50人ぐらいで授業をきき、質疑応答が最後にあるという形です。
ターム後の年明けに記述式試験があります。
試験は事前に授業でプリントで渡される10個くらいのテーマの中からだされます。
内容の確実な定着(暗記)および(むしろ)
思考力や分析力論理力や整合性の深さが問われ、試験は論文筆記試験のようなものです。

Bゼミ:、
ゼミは小・中の講義室で、だいたい6人から10人くらい。
それぞれ意見を準備していき、
ゼミごとに一回発表の機械が与えられます。
発表の後発表者に質疑応答、その後それぞれの意見を発表議論するというかたちでした。
それぞれの意見を発表する場にもなっていたので、
下準備をしっかりしていくのが当然で準備が足りない人はゼミに参加させてもらえないこともあるそうです。

ゼミ修了後、5000語のタームペーパーが各ゼミごと出されます。

夏タームに修論、15000語程度の修士論文を提出。

3.日本と比べて大変ですか?:
うーん、日本の法学部大学院のゼミの感じはわからないのであれですが・・・
大学のゼミに比べると、文献読み込み下調べは予習の半分で、
残りの半分で自説がためとその論拠の詰め。
自分の意見を積極的かつ論理的に展開する能力、
さらに発表者にあたった際は、
まずそのテーマについての一般的な知識の整理と理解、
そして自説を根拠資料と共に説得的でよりわかりやすく発表し、
わかりやすい事実の整理、資料原典の整理や資料の作成配布、自説根拠の説明が必要です。

おまけ:留学生の数
法学部大学院留学生は刑事法総合法コースではそれほど多くなかったです。
総合法学・刑事法分野で日本人は私だけ。
毎年サセックスはそんな感じです。
刑法はだいたい日本人一人パターン。
刑法コースほかにはアフリカ・スペイン・ギリシャ・フランス・フィンランドなどから少しいらしてましたが、
総合法は私以外イギリス人で、刑・総合法混合ゼミもたいていイギリス人学生98パーセントくらい。
商法コースでは各国から広く渉外弁護士事務所や官庁から
留学生が多数いらしていて中国・中東各国・イタリア・韓国などからが多かったです。

刑事法商法合同で各人各国のお得意料理を持ち寄るクラスランチやサッカー大会(風邪で欠席しましたが・・・)なども楽しく、船で行けるフランス、ノルマンディーへピクニック+合同ゼミもありました(これまたドジで不参加でしたが)。
専攻にかかわらず法学部大学院全体がまとまっていてわきあいあいのびのびしていてとても楽しかったです。

当時はとにかく調べ物予習で図書館とゼミ室とフラットで寝たら
また図書館へ、週末はほかのフラットのパーティとスーパーに買い物へ行き、
あっというまの一年、で、とにかく、とにかく、たのしく、あわただしくも、充実していましたね。
イギリス人学生達も特にゼミ発表前はランチどころか
授業とゼミと図書館の間に学食のレジ横のリンゴを買ってリュックに入れ
調べ物の間にかじるのが食事だったりも。

ちなみにイギリスはリンゴの種類も10種類以上あり
スーパーにはいろんな種類のリンゴがずらり。
サツマイモやジャガイモの種類も豊富で迷うこともありましたが、リンゴは香りでわかるので少し楽かな。
大学のカフェや食堂売店にはその中でも香りがよく甘くてかじりやす小ささのリンゴがレジそばに。
図書館の地下のカフェ・売店にサンドイッチだけでなく、
りんごとバナナがおいてあるのが理解できるようになってきたころ、
秋の終わりという感じです。

とはいえ、お互いの発表の合間には余裕もあり
各コース(特に刑法系)授業の合間やお互い時間のあるとき
食堂(なつかしー)でランチ一緒に食べたり、
フラット訪問しあったり、年末パーティで盛り上がったりほのぼの楽しかったですね。

ああ、イギリスのクリスピー懐かしい・・・(涙)

図書館は夜10時半か11時まであいていて、
キャンパスはほのぼと安全。24時間フルに時間を使っていたなーと思い出します。

また障害を持っている方もたくさんがんばっていらっしゃいました。
授業を行う教室の階を一階の階段を使わないですむ階にしてもらったりなど
障害者のハンデを最大限やわらげてくれる配慮
(図書館の階段を使わなくてすむ障害者用入り口などや学生寮も障害者用に低層階も)も。
様々な障害を持つ方もあきらめずにがんばってほしいと思います。

最後に今イギリスで勉強されているあるいはこれから留学される方に・・・
外国人でイギリスで博士課程に進みその途中でサセックス大学で教えていた先生の生徒たちへの一言:
「人間平等に24時間あるのよ。そのうち15時間使って勉強してご覧なさい」
/////////////////////////////////
ご参考までに・・・

私は大学院修士を二つとり今はブロガーをしています。
民主主義が選挙で終わらず、
きちんと政策分析政策批判政策提案に国民がかかわっていく
そういう民主主義の実質化として
ブロガーやツィッターやFACEは大きな役割を果たしています。
以前からインターネットで意見を発表してきたものとして
ネットでの政策形成参加が社会的に認知されてきたのは嬉しいことです。
今では英米ではインターネットブロガーの政策意見が採用される時代となり、
ネット政府が政府政治家国民市民と共に活躍しています。
日本でも首相官邸が多くのパブリックオピニオンを求めることはありますが、
多くは官庁が求め、活動家が書き込み、それを官庁や諮問委員が読んで、
それまでで終わるものになってしまっています。
よりインタラクティブで反応が直結しあらゆる論点につき分析批判提案する
民主主義の具体的反応こまめなフィードバックとして
ツィッターやブログでの政策分析提案批判などがあるといえるでしょう。

民主主義の前向きかつ論理的で合理性ある実質化の一方法として
ブログでの政策批判や分析提案という方法が、
インターネットを含む様々なメディアや様々なコミュニティで
益々広がっていくよう、
そしてブログ、ツィッター、政治家やメディアそれぞれが
前向きになり共に人権保障にとって合理的な政策形成を行っていく
そういう民主主義が根付き普遍化するようがんばりたいと思います。

大学院留学と就職という視点から考えますとそもそもの専攻分野が刑事政策でもあり、
そもそもアカデミアを目指していて途中で(リュウマチの治療)帰国しそのままですが、
のんびり体力をつけ、できればコンプライアンスや翻訳の職歴も積んで、
もしかしたら博士課程に将来は進むかもしれませんし、まだわかりません。

さて、ここでは大学院留学だけでなく、
イギリス大学留学のすすめも書いてみますね。
中学生や高校生のみなさんは、
もしも将来国際社会で就職やアカデミアを目指すなら
中学終わりくらいから英語を猛勉強し高校3年生でTOEFL600とるようにしておいて
(中学からがんばって高校3年くらいで猛勉強すれば600点とれると思いますよ。
英語好きなら、かもしれないけど)
高校2年生前半くらいで高校授業の勉強を終え
後はAレベル受験についてブリティッシュカウンシルへ相談へ行って
Aレベル準備コース・準備問題集などについて相談してみては?
というのも、イギリスの大学は3年で修了。
しかも、修士についてもその後の博士課程を考えたコースが用意されていて、
もし日本や欧米圏で就職考える場合も一年早くから準備できる。
考えてみる価値はあるのではと思います。

ちなみに、
TOEFLに関してしていえば
私自身は大学卒業後27歳くらいでベルリッツへ通っていた頃
初めてTOEFLを何の準備もせず受け567点くらいだったかな。
29歳ころから半年くらいづつ2度ほどイフ外語学院で勉強しほぼ590点台で安定。
33歳ころ日米会話学院の同時通訳科で勉強し,
その後翻訳通訳の仕事ながら留学準備している頃に600点越しました(ので語学準備コースは受けなかった)(イギリス留学中の2001年620)。

私が留学していたサセックス大学法学部大学院刑事政策学専攻コース
および総合法コースの2011プログラム:
(CRIMINAL JUSTICE LLM) 
(Law LLM) 

英国のゲイライツ関連ゼミを探されていらっしゃる方へ:
2011年度については当時私がとったようなゲイの結婚や子供を持つ権利などを直接あつかうゼミの設定は法学部大学院レベルでは家族法の中で扱われているようですParenthood and the Law, and The Legal Regulation of Adult Relationships・・

また、サセックス法学部卒業生であるゲイライツの人権活動家などによる
講演(2010/12/1)についてのニュース
をこちらにあげておきます。